東日本大震災の被災者の方々に、届けたい心。合掌。

実に半年以上、情報発信を止めていた事を反省の上、本日現在、税法や相続に関わる諸法の改正動向が、混乱国会から届いていない事で、言い訳とせざるを得ません。

平成23年3月11日を境に、何か価値観が変わってしまった人々がいます。元毎日新聞社の浅井隆氏が「もう日本は駄目だから、海外に私財を移しましょう」と、義援金、納税の意識より前に、国外逃亡を売りにしたセミナーをさかんに開かれます。
日本政府の借金は、今回の震災で1,000兆円をゆうに超えて、もう引き返す事は出来ない!と叫ばれたとしても、1億2,000万人の日本人は、この島国で生まれ、衣食住を確保し、ここで一生を暮らすのです。例え、政府が壊れても、日銀が破綻しても、ロシアも、トルコも、アルゼンチンも、庶民は経済活動を止めることなく、衣食住のシステムが少々入れ替わっただけで、国外逃亡者はいなかった。なのに、この事態を前にして、国外へ、と言う知識人が存在する。フクシマ報道の翌日から脱出していった中国人のように・・・。個人的には、浅井氏の言われる危機対応も当然正しい部分、多々あり、私もセミナー受講、既に3回目、有意義に聴かせていただきました。

日本の四季や風土の中で、同胞と共に暮らす毎日。この日常の中で、現行税制、法律の知識を学んでいく積み重ね。耳よりあいき情報発信の意図するところは、不変です。

この第143号を書き上げる頃には、相続税法改正を含めた税制改正関連法案は成立しているでしょうか。復興税とあわせ、具体的な条項は、時々の正式発表にお任せする事として、本号では、私が昨今の気になった判決、Topicsについて書き出すこととします。

文字数から、少々ギューギュー詰めとなる事をご容赦ください。

一つ目に、民主党が誤った専業主婦の年金を巡る対応のまずさ会社員や公務員を夫に持つ専業主婦は、「第3号、国民年金被保険者」となり、保険料を支払わなくても、満額で月額6.5万円の基礎年金がもらえる‥‥夫の退職、自らの就業の場合、保険料を納めない場合には、全くもらえなくなる事も‥‥あきらかに負担の空洞化。現役世代は厚生年金でも既に未納化がすすみ、事業主も年金給付を制限されても放置。基礎年金の財源を全額税金で賄う方式に移行というが、正直、財政破綻した日本には出来る筈なし。更に少子高齢化も、この先進んでいくのです。出来ないものは出来ないと、一日も早く本音を言うべき。

◆ 被相続人の預貯金取引履歴の開示請求判決に思う。H21.1.22~

かつては、預金契約の債務者である銀行金融機関は、預金者に開示する義務はないと判断していました。すると、相続人の一人が通帳を隠したような場合、他の相続人からは、原則として取引履歴の開示は請求できず、遺産分割に大きな影響を与えていました。

家庭裁判所にて遺産分割調停申立てをする場合や、遺言によって、自分の相続取り分が十分じゃないとして、遺留分減殺請求をするとなると、裁判所を介して開示請求が出来るのかどうか、これまでは、少々、中途半端でした。判例もゆれていました。

金融機関は相続人全員の同意がないと開示しない、として拒否していたのが、これまでの現場でした。

平成21月1月22日最高裁第1小法廷の判決は『金融機関が預金契約に基づき、預金者に対し、口座の取引履歴は開示する義務あり』としました。

相続が生じた場合において「共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人の預金口座について、その取引経過の開示を求める権利は、個々、単独で行使することが出来る」というべきなので、他の共同相続人全員の同意がないことは、上記権利行使を妨げる理由とはならないことに変更されたのです。

この判例が出た当時、あいきグループの取扱案件で、長男ご夫婦とご兄弟の間で家裁調停を行っており、調停成立直前、某地方銀行の取引記録を過去3年分まで弟さんに開示した上で、遺留分減殺額の決着をみることができました。22日以降に期日が延長されていたら、10年間分の開示請求も当然されたことでしょう。家裁調停の場で弁護士さんが使われる言葉は、一部相続人(この場合は、同居され身上看護をなさっていた長男ご夫婦)による使い込みや隠匿があったのではないかと、調査する!といった表現になります。
取引明細表を取得して、10年間にわたる入出金に対して、何に使ったのか説明せよ。さもないと、それは父からの窃盗だ!と言わんばかりのやりとりが、ご兄弟間で繰り返されているのが家庭裁判所です。

先日、ミニ冊子のなんでも相談室コーナーで、先輩司法書士がQ&Aされていました。調停申立てを行う事が出来る事。調停委員のリードで話し合いが整った場合、調書が作成され、不動産の名義変更などは単独で手続きする事が出来るようになる事。調停不成立の場合、家裁の審判が下され、更に不服ならば高等裁判所へ・・・という流れ。あいきでは、極力、この家裁詣ではお勧めしないよう努めています。

しかしながら、本来、兄弟姉妹は、心から親の財産を奪い合わないと納得できないのでしょうか?血を分けた者同士、故人の位牌を前にして、分割協議書に印鑑を押印しましょうよ。いつから、遺産に関して、分け前が足りないからと咬み付き合うハイエナに変貌してしまったのでしょうか?平成21年1月ではないですね。平成3年12月~、いや平成4年4月、少なくとも伊藤直樹の記憶に拠れば、バブル崩壊後に始まった相続税路線価の急上昇、生産緑地法改正、市街化区域内農地の固定資産税アップが境目となって、都市部日本人は、月の光を浴びた狼のように変身してしまったのです。

この変身対策として、唯一有効なのが公正証書遺言の作成です。

遺留分減殺請求にも対応できるように、父、母の、最期で、かつ最大のわがままを書いていただきたいのです。妹や弟にも少しずつは分けても良いけれど、均等分割は親としてのルール違反です。跡取りと、生活力が弱い子や孫に家財を渡し、所得がある子には渡さなくていいのです。遺言は親の義務であると確信しています。

上述のあいき取扱事例も、遺言をのこしていただいてありました。遺言執行者の私は、粛々と、遺言条項に従って兄弟へ相続分をご送金させていただきました。そこから減殺請求が行われ、家裁を舞台に、もっと遺産がどこかにある筈だ、この土地、建物は価値があるのないの、隠しているに違いない・・・が半永久に続きました。

本件でも遺言書がなかったならば、均等相続として、本家の家屋敷も全て売却処分の上、換価して、現金配当となったケースでしょう。

実は、私は次男です。兄夫婦が、大正生まれの父と昭和ヒトケタの母のお相手をしてくれています。お蔭様で老父母共になかなか健康にて、施設のお世話にはまだなっていません。私は兄と遺産争いをする候補者の一人です。エッ、本当に争族人にならないといけませんか? 私の妻はドライな東京人ですが、私自身は相続事案と、日々、仕事上向き合う立場から、日本の民法は家督相続=旧民法相続編に戻してもらった方が、ずぅっと平和であると確信しています。

日本人は遺産に準拠して生活していく民族ではなかった筈です。マイホームでも、賃貸派でも、衣食住なるものは自ら働いて家族のために確保する財です。私的所有権が守られ、義務(扶養、義援、家族内扶助・・・、中には自ら働きたくても事情のある身内が・・・)をまっとうする前に、権利のみ主張し、咬み付き合うハイエナ化した都市日本人。相続対策は、実は、子や孫をハイエナにさせないルール化なのではないでしょうか。

本題に戻すならば、私は上述最高裁判例に気持ち;反対です。(反対したって変わる訳ではないですが・・・。)使い込みや隠しがあったとすれば、それはそれで税務当局に頑張ってもらい、弟側が、同居されている跡取り兄貴さんに「おまえ、勝手に親の通帳から抜いただろォ」という調査ゴッコをするのはどうなのか。本当に使い込まれて困っている事案も勿論取り扱っています。が、なんでもかんでも、争族資料がどこからでも収集できる新ルールってどうなんだろう‥‥と。

◆アイエーカンパニー合資会社。時給は840円。

現在、名古屋法務局の不動産、商業法人の登記の証明書(かつての登記簿謄本)の発行業務を落札した、民間委託先の社名です。パート募集で「登記、法律のことは素人でもOK!」なんてやっています。国民が望んだ登記所の民間解放の一環です。法務局の正規職員は手をこまねいて見ているしかない。手伝うと偽装請負として労働局から公務員サイドが処分されます。

全国各地で落札したATGカンパニー株式会社と、子会社の上述アイエー社は、共に登記上の本店所在地に本社機能が実在しない事を国会で追及されるも、現に今日も、名古屋法務局の2階には彼等パート職員しか待っていない。
かつては、財団法人民亊法務協会が全国の法務局登記所の窓口業務を独占受託してきました。それが、「随意契約で業務独占」「法務省OBの天下り先」との声で、登記簿閲覧や証明書発行業務につき2007年から一般競争入札となりました。一年間の経費は103億円から59億円と44億円の削減です。同協会は入札に負け続け、2010年度は47法務局地方法務局(297登記所)のうち、釧路と松山の2局(7登記所)だけの受託です。

仕事は消え、天下りとは無縁で、女性がほとんどのベテランプロパー職員がすでに700人失職、この3月末で更に700人失職しました。

関東地方では大手人材派遣のテンプスタッフが多くの法務局を受託しています。同社もホームページで法務局パートタイム職員を募集しています。時給は800円から950円程。法務局を利用する側としては法務局の窓口は、ベテラン職員から新人パートさんに入れ替わっていると認識して利用しないといけません。
法務行政に少しなりとも携わる私が、こうして内部情報をひっぱってきてコメントする事はいけない、という足かせは、もうないでしょう。期待して、怒る方が遅れているのです。
パート職員、社員の方々はむしろ、新しい職場に馴れようと、一生懸命です。この途には、もはや後戻りはありません。

◆建物の表題登記、方法について

平成22年1月12日、不服審裁決 住宅借入金等特別控除の不適用となった棄却事例です。

自宅部分を含めた約539㎡の新築家屋。所有者Aさんは、住宅ローンと事業用ローンの2本の借り入れを金融機関から借入した上で、全体の約27%の居住用部分に対し、所得税税額控除をして、確定申告をしました。

管轄税務署は、全体の家屋中、居住用部分が例え物理的に区別出来たとしても、住宅ローン対象となる居宅が客観的に別途の所有物として認識できる為には、区分建物の表題登記、又は(又は、ではなく担保設定を必要とするので及び‥‥)保存登記が必要で、本件家屋については、一棟の建物とする表題登記、及び全体についてA所有権とする保存登記をしているだけでは、区分所有が成立しないと主張。「A」

Aさんは、抵当権を各別に設定登記したこと。この住宅ローン控除措置は、借入金、床面積、使用割合の3条件が判断されれば足りるので、区分登記されているか否かが問われるものではないと主張。「B」

国税不服審判所は、『一棟の建物での区分所有の成立には、建物の各部分が住居、店舗、事務所または倉庫その他の用に独立しているだけではなく、その各部分の所有権が客観的に外部から認識される必要がある。本件家屋については、一棟の建物として請求人の所有権保存登記がなされたものであり、一個の建物といわざるを得ず、居住用部分を区分所有したものと認めることはできない。また、その居住用部分も約27%であり、床面積の2分の1以上でないことは明らかであることから、同控除の適用はできない。』このような事案はあいき総合事務所において、初めから区分登記をニーズに合わせて行っています。区分にすると一個建物よりも当然2~3倍費用はかかります。まずは相談を!

「A」の勝ち、「B」の負け

◆税理士法人あいきの移転について・・・・

税理士法人あいき、代表社員 松田茂樹は、税務部門の執務環境の整備を主眼として、本年5月に、錦パークビル13Fへと所在を移すことといたしました。
しかしながら、これまで通り、登記・測量や不動産全般業務については、伊藤忠丸の内ビルのあいき総合事務所と協力グループ体として、しっかりと活動してまいります。

実際の日常業務は、税理士本職の判断にて、個別事案を片付けていく場合、場所は、お客様の会社社長室であったり、経理ご担当者様の面前であったり、個人のお客様・ご家族のご自宅へ訪問して、ということになります。

今年は、東日本大震災という大きな出来事を抱え、対応する税制を時限的に改正する動きも続いており、見逃す訳にはまいりません。

税理士法人あいき社員一同は、今回の名古屋事務所移転を好機として、それぞれのお客様にふさわしい、適確な判断とアドバイスが務められるよう、励んでまいります。

平成23年度の税制改正そのものは、廃案か駆け込み成立か。本誌が発信された頃、決定しているでしょうが、これだけ迷走した税制改正国会も珍しいですね。

グループ内の発言者、発信担当者毎にニュアンスが違った形で改正についての動向をお伝えしていた半年間だった事をお詫びすると共に、次の通り整理しておきましょう。

税法改正は、改正され且つ施行基準日からがスタートです。本誌発信文責 伊藤直樹は、自身をよく『ピーターと狼』の如く、狼が来るぞ!と前触れするスタンスで語ります。
しかし、最終決定してからが新しい税制である事を、今一度確認しておきましょう。

前ページの松田茂樹コメントと併せ、あいき総合事務所の受託する資産税事案に個別特命対応する為、税理士 一杉顕法(いちすぎあきのり)が、伊藤忠丸の内ビル2階へ、税理士法人あいきとは格別に、税理士事務所転入する事といたしました。

勿論、あいきグループ全体としては、これまで通り。むしろプラスアルファのオプション機能が増えた形です。

これまでにも積み重ねてきた、法務・税務のダイレクト・ワンストップーに拍車をかけます。・・・・

この問題とは別に、最近、あいきグループが18年間行ってまいりました相続関連セミナー、勉強会開催と同種の案内が、(今年は特に)新聞紙上、HP上等、俄然増えてきましたね。同種といっても、私の専売特許でもなければ、若い資格者のみなさんがどんどん街へ出て、タメになるであろう話をするって事は、とても歓迎すべきことです。

毎週末、相続の事や税法の改正予告が、結構無料で勉強出来る機会が増えていけば、誤った知識で対策を失敗し、「あぁ、こんな事ならあの時やっておけば!(やらんかった方が・・・)良かったのになぁ」と残念がる事が、一件ずつ減っていく事でしょう。

私も区役所セミナーの冒頭、「2時間の話を通して、少しでもそれぞれのご家族にとって有用な相続関連情報が、ひとかけらでも良いからお伝えできれば良いのですが・・・・」と前口上を述べさせていただきます。

資格業界に生きる輩には、事務所内にこもって、毎年発表となる数々の法規を学び続ける事が宿命です。それを選んだからこそ、少々一般のサービス業よりも付加価値分の報酬を頂戴させていただきます。

更には、事務所外へ跳びだして、自分の脳ミソが会得した知識の中から抜粋選択した情報を、多くの市民の方々に披露させていただく事も、付加価値の一環です。

私は、大した有名人でもなければ専門書の出版も生涯する事のない実務家であり続けます。その実務展開の中で知り得た情報が、タイムリーに、“あいきグループ”と接点を持っていただけた方々に伝わる事で十分です。

私も今夏、54歳。どうやら“若い”というレッテルは剥がれたようです。同輩のみんなが全く違った切り口から“耳よりな情報”を発信されていく事は、いいことじゃないですか!コッソリと受講しに行っている伊藤直樹を見かけても、笑って無視してやってください。

かつて、名古屋市内のホテルでウン十年、伊藤K先生の講義があり、私も10年以上、勉強させてもらいました。(少々受講料が高かった・・・)これまでにも、豊橋の大平先生や、中央総研の小島先生のお話を、随分参考とさせていただいてまいりました。

1年に最低でも1回は、花村一生先生のセミナーを聞かせていただいています。不動産鑑定士の三輪さんも、よく登板されています。(勝手に先輩のみなさんのお名前を拝借しました。ゴメンナサイ)

★★ 次 回 相続情報セミナー 開 催 の ご 案 内 ★★

平成23年 8月13日(土) 中区役所 大ホール

  • 13時開場 14時開演   入場無料・予約不要・入退場自由
  • 507名分、お席をご用意してお待ちしております。
  • ■ 相続に関しての講演(14時~16時)
  • ■ 無料個別相談(13時より開催)
         先着順にて受付致しております。

◎次回は11月を予定しております。詳細は8月以降のHPを参照ください。

◆JA農協に金融庁のメスが入る!! H23.5.8~

協同組合は、銀行、信用金庫、信用組合と違い、いまでも都道府県が金融の検査を行ってきました。今夏7月から、JAに対する検査指針を農水省と合意の上で設け、金融庁自ら、ようやく専門的検査に入ります。(これまでも、できるとはしていたものの、実績はゼロ・・・)

具体的には、貯金残高が1000億円以上、もしくは各都道府県の農協の平均貯金残高を上回っている農協が対象となります。全国約740農協の半数にあたる約370農協が対象となる見通し。

この農林水産省と金融庁の合意の意図するところは、中央組織の「1」農林中央金庫、都道府県単位の「2」信用農業協同組合連合会(信連)、「3」各地の農協、という3層の内、3における金融実態が不透明であるとして、初めて各地の財務局が立ち入ることとなったもの。

TVでゲゲゲの女房役で名をはせた松下奈緒がCMをしているように、農貯の利用は誰でもOK。今やJAの共済、住宅ローンは、一般サラリーマンも対象となり、誰彼と無くお金を呑み込んでいます。

どこから調べても、出てくる標語は「JAは健全経営」です。融資の日常業務において、市中銀行、信金さんが頑張っても、最後はJAの金利の方が安い!で幕引き。あいきグループもJA取引には日頃からお手伝い参加させていただく機会が多いのですが、同じ金1億円の融資の判断ひとつひとつをみると、市中銀行とそれとは、確かに違います。これからも永久に健全ならば良いのですが、今回の検査で、何が飛びだしてくるか。初めてのメス故に、注目いたしましょう。
ちなみに、農協の農業用事業資金貸付の担保は、農地が原則。
自宅の敷地を担保にとることはしないという不文律まであるとか。
担保実行しても、誰も入札しない農地競売情報をみるにつけ、末恐ろしくなるのです。

農協は農家のみなさんが立ち上げた組合です。主人公は農業従事者とそのご家族。誰も悪いことをやっていなければ、検査結果はマルの筈です・・・ね。

◆今回の相続税法改正の盲点/生命保険控除要件

平成23年度改正相続税の基礎控除が現行の6割に縮小される話は、ご存知のところ。金5000万→金3000万。法定相続人1人あたり金1000万→金600万ですね。

生命保険は遺族の生活保障のためのものです。全額を課税対象としてはまずいので、一定金額までは非課税にする措置として、《生命保険金の非課税限度額》を法定相続人1人あたり金500万円としてきました。

改正案では、以下に該当する法定相続人のみが対象となります。「A」

  • 未成年者
  • 障害者
  • 相続開始(死亡時)よりも前に被相続人と生計を一にしていた者

これは厳しい要件です。

平成22年度相続税ミニ改正として、被相続人の自宅敷地に対する小規模宅地の要件も、昨年4月1日から厳しくなっています。

《特定居住用宅地等》に該当するのは 「B」

  • 配偶者が取得
  • 配偶者以外の同居親族が取得し、相続税の申告期限まで所有、居住していること
  • 配偶者、同居親族がいない場合に、別居の親族が取得し、申告期限まで所有していること但し、取得者は、過去3年間、自己又は配偶者の持ち家がない場合に限られます)

「A」と「B」を比べてみると、似ているのが、故人との関係です。

生保の場合、これが亡くなる前日までに同一生計であること迄、求められるのですから、とても厳しい要件となっていきます。

  • → この、生計を一つにするという解釈が不明です。(以下、予測の○△×です)
  • → また、亡くなる前日までに同一生計となった証拠って、どういう事でしょう?

住民票を父親と一緒にし、暮らせば良いのでしょうか?

  • 同じ家屋の同居‥‥○ 母屋と離れは?‥‥△
  • 東京へ単身赴任しているが、週末は住民票上の父のもとに帰宅する‥‥○
  • 財布(日常生活)はひとつで、食卓を囲む‥‥○?
  • 成人の子供が大学の野球部で寮暮らし。親が仕送り、学費を払っている‥‥○
  • 老健施設入所中の親の療養費を、子供が支払っている‥‥○
  • 定期的に親の介護に通うし、財布は一つ‥‥△

(改正後、解釈については固まっていきます)

◆予備的(補充)遺言条項の必要性

最高裁平成23年2月22日 第3小法廷判決は、残念ながら、当たり前の事。1件、ダイレクトな事案をご覧ください

「『相続させる』旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と、遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限りその効力を生ずることはないと解するのが相当である。」

65才のBさんがあいき事務所にご相談いただいた当時、病気を患っているとは、わかりませんでした。90才近いお父様(Aさん)から、6億以上の資産を、公正証書遺言によって受け継ぐ予定であり、30才台のCさんへ、順番に従って相続をさせるおつもりでした。

BさんにはCさんと、もう一人お子様Dさんがおられ、B夫婦とDさんとは絶縁状態になっていました。担当の者がB→Cの遺言(案)を文章化して、Bさんの本意通りであるか、お尋ねの電話連絡をしたその前月に、B夫婦が揃って、相次いで他界された事を識り、驚きました。1ヶ月前までお元気で、Cさんの将来の事を考えた遺言案文を、こんな風にしたいもの、と笑顔で話されていたのに‥‥。

Bさんの相続 → 遺産分割協議で2人のお子様は、ほぼ2分の1ずつ、土地やマンションを分け合いました。私 伊藤直樹がお互いの家を行ったり来たりして、協議書への調印です。最期まで、2人が直接話し合える状況にはなりませんでした。

そして、Aさんが亡くなられました。1年の間に連続して3度目のお葬式です。

Aさんの相続人は孫5人。

Cさんと一緒に、Bさんの貸金庫の開扉に立ち会った際、Aさんから遺していただいたBさん宛とする旨の大切な公正証書遺言が出てきました。「私の全ての財産は、長男Bに全てを相続させる。遺言執行者は何某とする。」

地元の何某先生に10年ほど前に証人になってもらった公正証書でしたが・・・。予備的条項が入っていませんでした。
つまり、『AはBに相続させるとした上で、更に、BがAと同時あるいはそれ以前に亡くなっていた場合には、Bに相続させるとした遺産を、全てCに相続させる』旨の条項を書いておかなければ、全てパーなのです。遺言は失効です。

Aさんの相続人は全て代襲相続人、孫5人です。C・Dさん兄弟と東京在住の3人。
四十九日の法要後、お寺の一室に5人の法定相続人の方々に集まっていただき、Cさんから預かった公正証書遺言(A→B)を、念の為、私から読みあげた上で、「この遺言に沿った形でCさん達に不動産等を分割していただく方向で、いかがでしょうか。」と代弁したところ、東京の従兄様から、直ちにこう返答を預かりました。
「伊藤先生がAやBの相談に乗っていた事は、Cからも聞きました。私共は、名古屋の土地を相続しても仕方ありません。全ての財産を書画骨董まで含め、オープンに評価してもらった上で、1円単位まで5分割した分割協議(案)を提示してください。

法定相続分通り分割し、それに見合った税額を、現金預貯金を解約換金の上、相殺して、全て10ヶ月以内に各自の口座に送金していただく条件で、あいきさんに事務を頼みます。それ以外の分割割合を名古屋の2人から出すというのならば、私共3人は、各自弁護士に依頼をします。」と。

※ 少々脚色をしましたが、現在あいき事務所では、予備的遺言条項を、全てのお客様の遺言の中に記載させていただきます。必ず、付け加えます。

以上 文責:伊藤直樹

◆あらためて、家族で生活することの大切さを考える

2世帯住宅に住むご長男様が、亡母堂様のご自宅の土地を取得して、240㎡ 80%の居住用小規模宅地等の評価減の特例を使えるかどうか?

1階にご両親、2階にご長男ご家族がお住まいで、それぞれ玄関は別々で生活できるように建物の構造上は区分されていました。法律上、もし配偶者及び同居親族がいないケースは、申告により80%の評価減が認められることが明示されています。ただし今回のケースは配偶者であるお父様がご存命のため、法律をそのまま形式的にみると80%の評価減は難しいと考えられました。

そこで私いちすぎは、お母様の亡くなられた直前の皆様の生活をいろいろおうかがい致しました。

お母様が体調を崩されていたため、ご長男さんの奥様が食事、掃除、洗濯などの家事を全て手伝われていたとのことでした。・・・生計を一にする家族です。であれば80%評価減はできます。・・・よくよく聞くと2世帯住宅の一部が改造されて外に出なくても1階に下りることができて、お孫さんがお爺ちゃんお婆ちゃんの世話をして、皆さんが1階で寝泊りもしていたようでした。遅く帰ってくるご長男さんは2階で単身赴任のように眠っていたようですが・・・(淋)。

とにかくご自宅の土地の評価減は最大限適用することになりました。

税法は形式基準と実質基準があり、まずは形式基準での判断から入り、実質基準が最終的な結論を導きます。税金のために生活を変えるのはナンセンスだとは思いますが、2世帯住宅をつくるなら構造上行き来できるように造りましょう!母屋と離れも渡り廊下を造りましょう!(形式)
そしてできる限り一緒に生活をしましょう!(実質!?)

文責:一杉顕法

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