建物滅失登記の危険性

 法務局による職権滅失は、現存する物件も間違えて登記簿閉鎖してしまう恐れあり!?

 現在、相続登記が未了の建物登記が、当該建物自体は既に取り壊されていても、残存している事が多くあります。
 今回、とある売買対象の土地上に、現に取り壊しを行うこととなる売主Aとの既登記と、既に数十年前に解体済みと推定される個人B、個人Cの既登記建物が確認されました。
 現状、Bは近隣に2代後の相続関係者が居住されている事が判明していますが、Cについては昭和50年代の住宅地図上に同姓の個人名が確認のみ、できてはいます。
司法書士として決済を担当し、且つ、土地家屋調査士として相談を受けた私が、時間と費用のご案内をしたところ、売却を急ぐという理由・・・それのみをもって、売主Aは、B、及び、C所有者の既登記建物を、土地所有者からの滅失申請を、解体日付原因欄の記載もなく、添付書類もないまま、申請されました。
 私達、土地家屋調査士は、調査し、探し出して相続人の方から委任状をとりつけるか、どうしても相続人が判明しない場合、近隣の聴き取りも行うのが責務と考え、当然、愛知県土地家屋調査士会としても、役員、又、先輩会員から後輩にも伝え、実施してきています。
 昨今、宅建業者の方からは、個人で土地所有者から申出を出せば、職権で所有者不明の建物滅失登記は、何も資料をつけなくとも処理してくれるから、土地家屋調査士に頼まなくてもお金がかからないといわれているといいます。
 このような状況で、何でも職権滅失は可能と、登記窓口で回答されるといった事は、継続されるおつもりでしょうか。
 法務局側では近隣調査もしない。市役所の課税の有無も確認しない。相続人不明でも消してしまう事はオーバーラン…と、私は思います。
 危険な本人申請、安易な土地所有者からの申出滅失は注意したいものです。